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腎不全患者に対する炭酸水素ナトリウム

腎不全患者に炭酸水素ナトリウムが処方されていることを見かけると思います。

慢性腎臓病患者では、腎機能低下が進むと、高Cl性の代謝性アシドーシスがみられます。また、末期腎不全では、Clが症状していなくともアシドーシスを呈することもあります[CKD診療ガイド(高血圧編)]。

 

慢性腎臓病患者のアシドーシスは死亡率[Nephrol Dial Transplant. 2009 Apr;24(4):1232-7. ][Am J Kidney Dis. 2013 Oct;62(4):670-8. ]やCKDの進行と関連しています[Am J Kidney Dis. 2009 Aug;54(2):270-7.]。

 

治療は炭酸水素ナトリウム1.5-3.0g.dayを投与し、血清重炭酸塩濃度を是正します。22mEq/L以上が目標となります[CKD診療ガイド(高血圧編)]。

Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO)ガイドライン2013では、血清重炭酸塩濃度を正常範囲(23〜 29 mEq / L)で維持し。通常投与量は0.5-1.0mEq/kg/dayとされています。

ちなみに、炭酸水素ナトリウム1gは12mEqのHCO3-と12mEqのNaを含みます[今日の治療指針2011別冊]。

 

もし、重炭酸塩の測定をしていない場合は、血清Naから血清Clを引いた値から確認してみることもいいと思います。

炭酸水素ナトリウムによる補正は,血清重炭酸イオン濃度 20mEq/L 以上を目標とし,これは血清ナトリウム-血清クロールでは概ね 32mEq/L 以上に相当します[日腎会誌 2015;57(5):858‒868.]。

 

炭酸水素ナトリウムは1g中にNaを12mEq含み、Na投与による血圧上昇が懸念されるかもしれませんが、CKD患者においては、血圧上昇との関連は否定的です[J Am Soc Nephrol. 2009 Sep;20(9):2075-84.][J Nephrol. 2019 Dec;32(6):989-1001.]。

 

CKD患者を見かけたら。アシドーシスのモニタリングもしてみるとよいでしょう。