眼内リンパ腫に対する硝子体注射
眼内リンパ腫は珍しい疾患ですのであまり目にする機会がないかも知れません。眼への抗がん剤投与を考慮する疾患です。
治療は局所化学療法(眼)や全身化学療法、放射線療法を行います。全身化学療法は高用量メトトレキサートやR-MPV(リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン)が選択されます。中枢神経浸潤予防のために髄腔内注射をする場合もあるでしょう。
局所化学療法
①MTX硝子体内注射
【スケジュール】
MTX400µg/0.1mLを投与するスケジュールです。報告により多少スケジュールは異なりますが、
MTX 400µg 週2回 最初の1ヵ月
MTX 400µg 週1回 次の1ヵ月
MTX 400µg 月1回 9ヵ月-1年
上記を30G1/2インチの針を用いて毛様体扁平部(pasrts plana)から投与
溶解液0.1mLに眼灌流液やデキサメタゾン注射液を用いる報告もある[Jpn J Ophthalmol. May-Jun 2008;52(3):167-174. ][Vol.61 No.6 2019眼内悪性リンパ腫の診断と治療]
【副作用】
MTX の硝子体腔内注射では結膜充血や角膜上皮障害など副作用がみられることがあり,多くは一過性であるが,重篤な角膜上皮障害を生じ,継続投与が困難となるケースがある[臨眼68(1):42-49,2014]
白内障(26例のうち73%)
角膜上皮症(26例のうち58%)
黄斑症(26例のうち42%)
硝子体内出血(26例のうち8%)
視力委縮(26例のうち4%)
無菌眼内炎(26例のうち4%)
不可逆的な視力喪失は見られなかった
[Ophthalmology. 2002 Sep;109(9):1709-16. ]
【その他】
好中球<1200、血小板<100,000、患者の状態不良で中止または延期[Arch Ophthalmol. 1997 Sep;115(9):1152-6.][Ophthalmology. 2002 Sep;109(9):1709-16.]
角膜上皮障害は週1回もしくは週2回投与で発生したが、注射頻度の低下により自然消失した[Jpn J Ophthalmol. May-Jun 2008;52(3):167-174. ]
少数の患者で糸状角膜炎が発現したが、局所葉酸投与(0.003%溶液)し、その後は注射の頻度を週1回に減らすことで対応[Bull Soc Belge Ophtalmol. 2001;(279):91-5.]
②リツキシマブ硝子体内注射
【スケジュール】
リツキシマブ 1mg/0.1mL 週1回 4週間
必要に応じて追加で実施
【副作用】
一過性の眼圧上昇
油脂様角膜後面沈着物を伴った眼内炎症
[Transl Vis Sci Technol. 2012 Oct 22;1(3):1.]
【その他】
緑内障もしくは高眼圧症患者は実施していない
[Transl Vis Sci Technol. 2012 Oct 22;1(3):1.]
MTXの報告はいくつかあり、高い有効性を示すためガイドラインでも推奨されていますが(推奨グレードC1)[脳腫瘍診療ガイドライン2019年版第2版]、リツキシマブの報告は数が少ないのが現状です。MTXは副作用の頻度も高いので、症状に応じで週2回から週1回にスケジュール変更したりすることの考慮が必要です。