しやいとブログ

つれづれなる薬剤師のブログ

メルファラン大量投与時のクライオセラピー

多発性骨髄腫の造血幹細胞自家移植前にメルファラン大量療法が用いられます。投与量が2日で200mg/m2ですので、他のメルファラン含有レジメンと比較すると多量の抗がん剤が投与されることになります。そうなると問題となってくるのが、副作用です。

添付文書に掲載されている国内phase IIでの有害事象及び副作用の発現頻度では、

下痢  :96.2%

口内炎 :80.8%

悪心嘔吐:73.1%

上記のように粘膜系の副作用の発現が必発です。

当院では、上記の対策としてクライオセラピーを実施しています。

 

クライオセラピーにより副作用を軽減できるという報告はいくつかあり、Bone Marrow Transplant. 2006 Jun;37(11):1031-5.などがあります。この報告では、投与30分前から開始し、投与終了6時間後までクライオセラピーを実施しています。

この報告の後に、クライオセラピーの実施時間を投与15分前から開始し、投与終了後30分後まで継続と先の報告よりも実施時間を短縮しましたが、粘膜炎の発生率と重症度に影響を与えなかったという報告が出ました(Bone Marrow Transplantation (2006) 38, 637–638)。これはメルファランの薬物動態に基づいて設計された方法です。

 

メルファラン大量療法を受ける患者さんにはクライオセラピーを実施することにより副作用の重篤化を抑制できることを伝えてみるとよいでしょう。