しやいとブログ

つれづれなる薬剤師のブログ

化学療法と血栓症

先日、医師からこんな問い合わせがきました。

血栓症でアピキサバンを内服している患者に化学療法を施行しようと思うんだけど、どんな影響があるのか」。

尿路上皮がんでMVAC導入を検討している患者。年齢は比較的若め。常用薬はアピキサバンと便秘薬などを使用していました。抗がん剤血栓症の関連については勉強したことがありませんでしたので調べてみました。

※MVAC(メトトレキサート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン)

 

①がん患者では、血栓症の発症リスクが約4倍、がん患者で化学療法施行中の患者では、約7倍の血栓症のリスクがある[Arch Intern Med. 2000 Mar 27;160(6):809-15.]。

②シスプラチン投与により、血栓症のリスクが上昇するという比較試験はいくつかある。

③添付文書には、重大な副作用として、静脈血栓塞栓症の記載がある[ランダ注®添付文書]。

④シスプラチンの用量が30mg/m2/weekを超える患者で静脈血栓症のリスクが増加した(RR:2.71)というシステマティックレビューの報告もある[J Clin Oncol. 2012 Dec 10;30(35):4416-26.]。

⑤MVACにより、静脈血栓塞栓症のリスクが上昇したという比較試験の結果がある[Cancer. 2004 Apr 15;100(8):1639-45.]。

静脈血栓塞栓症の既往がある尿路上皮癌の再発症例にはシスプラチンの使用を控え、パクリタキセル+ゲムシタビンによる治療を行っている施設もある[西日泌尿. 80:527~531. 2018]。

 

シスプラチンによる血栓症のリスク上昇については有名な話であることを知りました。最近、前立腺がんの定期検査でCT上血栓が認められ緊急入院になった患者や、入院してヘパリンを持続投与しているがん既往歴のある患者と接することがあり、悪性腫瘍患者には血栓症の可能性を考慮するべきなんだと思うようになりました。